去年・・・・・・って言っても、ついこの間だけど。日吉から、初詣に行かないかと誘ってもらった。
たしかに、日吉は和風の雰囲気が似合うし、日本の伝統行事になら参加するイメージもある。・・・・・・でも。基本的には、イベント事に興味が無さそうな日吉。その上、神頼みはしないし、人ごみも嫌いそう。
本当に、初詣になんて行きたいの?と疑問に思っていたら、そんな私の様子に気付いたらしい日吉が「せっかくだから、な」と付け加えた。
何が「せっかく」なのか。“せっかく、私たちは日本に産まれ、日本人として育ってきたのだから、初詣にでも行っておこう”なのか。でも、そんな理由なら、去年にも適用できる。だけど、去年は誘ってくれなかった。
じゃあ、今年と去年で違うことと言えば・・・・・・私たちの関係。つまり、日吉は“せっかく、付き合っているのだから2人で初詣に行こう”と言いたかったんじゃないのか。
・・・・・・まぁ、そこまで考えなくとも。私にとっては“せっかく、大好きな日吉に誘ってもらったんだから、行かないわけがない”もん。
そんなわけで、今日は朝から機嫌よく、私は初詣へ出かける準備をしていた。やっぱりカイロは必需品だよね、なんてことを考えていると、ケータイが誰かからの着信を知らせた。
日吉かな?何かあった、とか??と思いながら、慌ててケータイを見ると、そこに表示されていたのは・・・・・・幼馴染の名前だった。
・・・・・・たぶん、用件はわかった。だって、長い付き合いだし、それに去年のことを考えると、ね。
そう思いながら、落ち着いて電話に出た。
「もしもし?」
『おぉ、やっと繋がった!明けましておめでとう、!』
「おめでとう、赤也。」
『今年も・・・いや、これからもずっと、ヨロシクな!』
「こちらこそ、ずっとヨロシクね。」
『おうよ!・・・ってわけでさ、今年も初詣行かねぇ??』
やっぱり。予想通りの言葉だった。
私たちは昔、よく家族ぐるみで初詣に行った。そして去年、もう私たちは引っ越していたんだけど、赤也が連絡してきてくれて、私と赤也だけは一緒に初詣に行くことになった。
でも、今年は・・・・・・。
「ごめん。今年は去年からの先約があるの。」
『もしかして・・・・・・日吉じゃないだろうな?』
「・・・・・・日吉だけど。」
『やっぱり!!道理で、いつもより声のトーンが高いわけだ!』
「そうかなー?」
『そうなんだっつーの!まぁ、いい。どこに行くんだよ、初詣。』
「どこって・・・・・・たぶん、名前聞いたって知らないんじゃない?氷帝に近い所なんだけど・・・。」
『OK、わかった。俺も行く。』
「えっ?!だ、ダメだよ!!」
『なんで?』
「だって、日吉と赤也が会ったら喧嘩になっちゃうでしょ?だから、ダメ!それに・・・・・・。」
『何だよ?』
「それに・・・デートだから。日吉と2人で行きたいの・・・っ!」
『・・・・・・な、何〜〜〜?!!!、お前!いつの間に!!!』
「去年の12月。・・・って、もういいでしょ!そろそろ日吉が迎えに来てくれる時間だから。じゃあね!」
『あ、オイ!ちょっと、待てって!!』
「何?もう時間ないんだからー!」
『・・・わかったよ。さっさと行って来い。』
「赤也?」
『じゃあな!!』
かなり不機嫌に切られた電話。・・・何よ!待てって言ったのは、そっちのくせに!!
とか思っていたら、家の呼び鈴が鳴った。どうやら、日吉が来たみたい。
私はカイロを袋から出さないまま鞄に入れ、慌てて家を出た。
「・・・そんなに慌てる必要はないぞ。」
「だって、外は寒いでしょ?日吉を待たせるわけにはいかないじゃない!・・・って、そんなことより。明けましておめでとう!」
「あぁ、おめでとう。今年もよろしくな。」
「こちらこそ、よろしく。」
「じゃあ、行くか。」
「うん!」
日吉に並んで歩くと、日吉がパッと私の手を掴んでくれた。ビックリして日吉の方を見たけど、日吉は前を向いたままで、目を合わせようとしてくれなかった。・・・まぁ、たしかに、私も恥ずかしいもん。
でも、そのおかげで、ちょっと体温が上がって、今の所はカイロも必要ないね。
予想通り人が多く、お参りするまでに結構時間がかかったけど、日吉と居るから苦に思うことはなかった。持って来たカイロも活躍して、寒さも少しは和らいだしね。
当然帰り道も混雑していて、私たちは喋りながら、またゆっくりと歩いていた。
「ところで。日吉は何をお願いしたの?」
「特に何も。」
・・・・・・。それ、初詣に来た意味無いんじゃない・・・・・・??
とは思っても、口に出すことはしなかった。まぁ、そうだろうなぁ、とは思ってたし。日吉なら、どんなことも、自分の責任だと考えていそうだもんね。
「そういうは?どんな願い事をしたんだ?」
「・・・・・・内緒!普通、そういうのは人に言うもんじゃないでしょ?」
「じゃあ、そもそも俺に聞くなよ。」
そう言いながらも、日吉は楽しそうに笑っていた。
・・・・・・そうだよね。何も、初詣はお願い事をするためだけに来てるわけじゃない。むしろ、それが本来の目的でもないだろうし。だから私たちにとっては、こうして楽しい時を過ごすことが大きな目的の1つなんだ。
「こういうのが、初詣での定番のやり取りなんじゃない!」
「・・・・・・そういえば。もう、こんな時間か。」
「あ、ちょっと!無視?!」
私もそう言いながら、表情は明るいものだった。
「は時間大丈夫か?」
「え?・・・う、うん。だって、まだお昼でしょ?大丈夫だよ。」
「じゃあ、何か食べてから帰るか。」
「・・・・・・うん!」
まだ日吉と一緒に居られるんだと思うと、自然と顔が綻びる。・・・・・・幸せだなぁ、なんて考えながら、やっと人ごみがマシになってきた辺りを見渡した。どこのお店に行こうか、と尋ねようとしたとき。
「赤也・・・・・・!」
予想外の姿を見つけた。その表情は、いつものような元気なものではなかった。
電話では少しイラッともしたけれど、今は気持ちも落ち着いて、自分も悪かったと謝ろうとしたら、先に赤也が口を開いた。
「・・・・・・。今朝はゴメン。」
「ううん、私こそ!!朝は忙しくて、ちゃんと説明できなくてゴメンね?」
「・・・・・・。」
赤也の表情はまだ戻らなくて、私は慌てて言葉を続けた。
「もしかして、それを言いに、わざわざ会いに来てくれたの?」
「・・・・・・新年早々、に嫌われたくなかったから。」
「私だってそうだよ!だから、ありがとね。」
私がそう言うと、少し赤也に笑顔が戻った。
・・・・・・良かった、と一安心しかけたら、赤也がいつものようにキッと日吉を睨んだ。そして、日吉の顔もムッとする。
そうだった・・・!この2人は会わせちゃダメなんだった・・・・・・!!
「日吉。」
「何だよ。」
「俺はまだ認めてねぇからな。これからも、ちゃんとお前がを幸せにできるか、監視し続けてやる。覚悟してろよ?」
「安心しろ。お前なんかに言われなくても、は俺が幸せにする。」
「絶対だな?」
「当然だ。」
「じゃあ、もうお前に用は無い。・・・・・・じゃ、。コイツに対する愚痴でも何でも、俺に連絡してくれよな!そんで、どっか遊びに行ったりもしような?」
「・・・・・・う、うん!わかった。今日は、ここまで来てくれて、ありがとう。この埋め合わせも必ずするね。」
「おう!楽しみにしてるぜ?んじゃあな〜。」
そう言って、赤也は大きく手を振りながら、いつも通り元気良く立ち去った。
でも正直、赤也の機嫌が直って良かった、なんて呑気なことは考えていられなかった。だって、さっき、日吉が言ったことって・・・・・・。
「さあ、行くぞ。」
「あ、うん・・・・・・!」
日吉が繋いでいた私の手を引っ張り、ズンズンと歩き出してしまった。そのおかげで、私は少し日吉を追うような形で歩くことになったんだけど・・・・・・。そのとき、日吉の耳が赤く見えたのは、寒さの所為だけじゃないかもしれない。
A HAPPY NEW YEAR☆
昨年は、大変お世話になりました。本年も、当サイトと私マイミーを、宜しくお願いいたします!
というわけで、初詣夢です!実は、クリスマス夢よりも早く書き終えたという・・・(笑)。とにかく、今回は切原くんの再登場です。
やはり、幼馴染が日吉と付き合っちゃった後、彼がどう関わるのか、を明確にしておきたかったので。今後は、彼も邪魔はしないと思います。認めてはいませんけどね(笑)。
('10/01/01)